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=院長日誌補足=
「歯はなぜしみるのか?」
2001/02/28 (水)

反響
 今月は、とりとめもなく歯科にまつわるハナシを書きなぐってきました。

 友人からのメール:これぞ歯科医院のホームページです!
 兵庫県の方からのメール:本音が見えておもしろかった。相互理解に役立った。

 「待合室」にもブラッシングや歯科医院との関わりに関するご意見を多数いただきました。ありがとうございます。
 いつもより反響が多かったのは、やはり歯科医院のホームページは「歯科の話題」が一番、ということなのでしょうか・・・

 一月毎にテーマを決めておりますので、「歯科にまつわるハナシ」は今日でいったん中断いたします。僕自身、書いていて「考えの整理」もつきましたし、まだまだ色々と考えなければならないことがたくさんあるな、という念にもかられました・・・

 「間違いだらけ・・・」にも書いておりますが、まだまだ僕はヒヨっ子です。(ヒヨっ子っていう面じゃありませんが)
 もしかしたら正しくないことも書いているかも知れません。他の偉い歯医者さんから「何バカなこと書いているんだ!」といつか一喝のメールでも来るのではないだろうかと一ヶ月ビクビクしておりましたが、幸いそういうことはありませんでした。

 さて、実は僕がインターネットに繋がるようになってからまだ1年経過しておりません。来月は「僕のIT革命」というタイトルで書き綴っていこうと考えております。
 今後ともよろしくお願い申し上げます。
2001/02/27 (火)

メール相談
 メールの相談は最近も結構いただく。
 実は文章のみから症状を診断し、どう対処したらいいか、ということははっきり言って不可能に近い。

 僕は考えられる可能性を列挙させていただいている。そしてなるべく客観的に回答しようと心がけてはいる。
 もちろん「一番よく診断」できるのは、直接診ている担当のドクターであろう。

 にも関わらず、こちらに相談にこられるというのは、次の点からだと思っている。
・忙しそうで聞きづらい。
・尋ねても答えてくれない。
・尋ねても答えはいつも同じ。
・怖くて聞けない。あるいは尋ねる雰囲気でない。
・答えてはくれるが、その回答に納得がいかない。

 いつも相談のメールを読んでいて、ハッとさせられる。実際僕が診ている患者さんにちゃんと判るように説明しているだろうか?説明して「判ってもらった」気にはなっていないだろうか?

 そこで一通り説明したあと、判っていただけたか?あるいはまだ何か尋ねたい点がないか?をこちらからお聞きすることにした。

 メール相談をしていて、もう一点勉強になることがある。結構多くの方々が「経過」を教えてくれるのである。これは「僕の回答」がある程度正しかったのか、それとも見当違いの回答をしていたのか、ということが判るからである。
2001/02/27 (火)
「補足」
 現在数名の方より、メールにてご質問をお寄せいただいておりますが、当方の使用しておりますレンタルサーバーのメールサーバーが障害を起こしており、現在メール送信できません。今しばらくお待ちくださるようお願い申し上げます。
2001/02/26 (月)

人生勉強
 今月も残り少ないので、とりとめないハナシを少しまとめる方向にもっていかなければならない。

 飛び込みのセールスの人がよく来る。マイラインの勧誘だったり、レジスターや電飾看板のセールスだったり、怪しい利殖話だったりする。アポイントがなくても一応ハナシは聞く。何故なら、セールスマンの話術の中に「僕らが患者さんと接する時の話術」の参考になることがほんのちょっとでもあれば勉強になるかな?という思いがある。

 僕は、そのセールスのハナシがまともなものか否か、という以前に「ヒト」を見る。中には基本的に箸にも棒にもひっかからないヒトもいる。
 ハナシ半分でお引取いただく。

 売らんかなの姿勢丸出しのヒトもいるし、「期間限定」なので今すぐ契約したほうがお得としきりに契約をすすめるヒトもいる。これはダメだ。
 心の片隅にちょっとでも、これはいいかな?と思っても、「期間限定で今ならお安くしております」などと言った文言が出てくると、途端に僕は警戒する。

 契約したとたん、ニューモデルが出るのではないか?とか、年がら年中「期間限定」とウソぶいているのではないだろうか?とか・・・

 患者さんである「あなた」にも「ヒトを見抜く眼力」を養って欲しいのである。

 僕も痛い目にはたくさんあった。恥ずかしいハナシ、大きなお金を半分サギにあったようなこともある。数年前倒産した宝石店から「巧みな話術に乗せられて」150万円もする指輪を買ってしまったこともある。
 でもそれは人生生きていく上での「授業料」だと思っている。
 
 最近ではだいぶ「美味い話」をやんわりと、かつ理詰めで断れるようになった。

 患者さんである「あなた」も、もしかしたら歯医者で何らかの困った目に逢ったかも知れない。あるいは幸運にもよい歯医者さんにめぐり合っているかも知れない。
 いずれにせよ、人生は勉強である。どんなに不幸なことがあっても、それを「糧」とすればよいのだ。何か次に繋がるきっかけが潜んでいるはずなのである。
2001/02/25 (日)

レセコン
 昨日書いたことは、実はよく理解していただけないのではないかという危惧の念にかられた。

 実は歯医者でも「よく判っていない人」はたくさんいるのではないかと思う・・・

 僕も雇われていた時は、あまり治療費というものを意識したことはなかった。特に大学に籍を置いていて出張にでかけた時は、カルテの内容は手書きするが、点数などは窓口の会計まかせだった。点数のことは何も意識していなかったのである。
 前歯の白い被せる冠が「いくらくらいかかる」などといったことは全く頭に入っていなかった。

 現在電子カルテやレセプトコンピューターはかなり普及してきており、歯科医師は治療した内容をクリックで選んでいくだけである。レセコンまかせにしている人は「点数」をあまり意識していないかも知れない。

 そのような歯科医院で、「この次いくら治療費がかかりますか?」と尋ねても「さあ、一体いくらかかるのでしょうね・・・」と返答が帰ってきても不思議はない。

 僕はカルテもレセプトも手書きなので大体把握しているが・・・

 世の中便利になってきているのか、不便になってきているのか判らない・・・
2001/02/24 (土)

医療保険制度
 今日の新聞のトップに面白い記事が載っていた。もしかしたら、限られた新聞にしか載っていなかった記事かも知れないので概要を書くと・・・

・・・全国の国保(国民健康保険)組合では「退職者」に関して2割の負担金で済むところをその制度を周知徹底していなかったため、多くの人が3割負担の通常の国保の扱いになっていたらしい。
 このほどそれじゃダメだということで約60万人に通知し、25万人が「退職者医療」の扱いを受けることとなったが、今度は「国保側」の負担が増えてアップアップとなっている・・・

 論評にどこかの教授が「医療制度を抜本的に改革しないで伸ばし伸ばしにしてきたツケだろう」とのこと。また「医療保険制度」自体が複雑になりすぎて、誰も把握しきれていない、とも記述があった。

 この記事がでるまでもなく、今の医療保険の制度はめちゃくちゃ複雑だと思う。おおざっぱに「社保」と「国保」に分かれるがさらに、老人医療、退職者医療、障害者、母子家庭、学校保険、生保などなどがあり、窓口も別々だし、負担率や負担金なども事細かに違う。また負担金が半年くらいでコロコロ変わったりもする。
 僕も把握しきれていない。

 月が終わると「請求書」を作成する作業があるのだが、その書類作りは七面倒くさい作業の何物でもない。

 今年に入って「クレジットカード」で支払いができる装置を導入した。カード業者がタダで設置していったのである。先日初めて使ってみたのだが、実に簡単。カードをスーっと機械に通し、指示されたボタンを数箇所押すだけである。
 後は出てきた伝票に患者さんのサインを貰うだけ・・・

 医療保険の請求もこのくらい簡略化されたら、我々も楽チンなのだが・・・
2001/02/23 (金)

トラブルの回避
 それでもやはり通われている歯医者でお困りの方はいると思う。特に料金をめぐってはトラブルの元になりやすいようだ。
 「明細書を見せろ」という気が判らないでもない。

 では、トラブルを避けるにはどうしたらよいのだろうか?「一番いい手段」は事前に確認することである。
 患者さんの立場にすれば、次回「歯が入る」と言われてもいったいいくらかかるのか判らない。相場を知らないからだ。保険で前歯に白い歯が入ると言われたが、次回どのくらい用意すればよいのか?
 2000円?5000円?はたまた10000円もかかるだろうか?

 例えば、僕なら患者さんから尋ねられなくても「次回は保険の白い歯が入りますが、だいたい5000円から6000円かかります」と伝えておく。
 もちろん「次回は5120円かかります」と厳密に計算することもできるが、こちらも下二桁までは正確に把握していないし、自己負担率によっても計算が変わってくるので大雑把な数字となる。

 それでも患者さんは安心される。予めだいたい判っているのと、歯が入って会計でいくら請求されるだろうか?とドキドキするのとでは天と地の違いがあるはずだ。

 一度の治療費が2〜3千円の時は言わない。まあ、床屋代程度と思われるからである。(まあ床屋でもパーマでもかけようものなら1万円以上はするが)

 要するに、もし何らかの疑問があれば、何でも事前に尋ねて欲しいのである。これは「間違いだらけの歯医者さん選び」でも書いたことではあるが・・・
 そして、治療の内容をはっきり言わなかったり、次回いくらかかるかおおよそでも即答できないような歯医者は通院をやめて欲しいのである。
 現時点ではそれ以外に「あくどい歯医者を淘汰する」道はないのではないかと思っている。
 ただし、「間違いだらけ・・・」でも書いたが、全てにわたって、そして万人にとって100%の歯医者はいないと思っていただきたい。
2001/02/22 (木)

医療の明細・再
 しつこいかも知れないが、医療、特に歯科医療において「他のサービス業」や「小売業」と決定的に異なる点を挙げておこう。

 全てオーダーメードであるということである。
 全て顧客(患者さん)から注文を受けて、全て個別に対応し、注文に応じなければならない。それこそ他に例えるとしたら、住宅の建築や完全オーダーの服に例えるのが一番妥当かも知れない。

 つまり、工場や農場などで大量生産されたモノを「小売り」するスーパーと根本的に一緒ではないのである。

 仮に一個の差し歯を作るのにも神経をすり減らして個別に歯を削り、個別に型を取り、専門の職人(技工士さん)が手間暇かけてコンマ何ミリ以下の精密さで個別の歯を作製する。はっきり言って「世界中に一個の差し歯」である。
 また、それを患者さんの口の中にセットするのも大変気の使う細かい作業なのである。極端に言えば噛み合せで「髪の毛一本分」合わなくても不快なものである。

 そして、そのやり方しかないのである。住宅なら建て売り住宅やマンションがあるし、服なら既成服も売っているが、歯の治療で「既成」はない。(仮歯で一部既成品を手直しして付けることはあるが)
 100%オーダーメードと言っても差し支えない。

 だから、賢明な患者さんには「スーパーですら明細書をくれるのに、歯医者で明細書がないのはおかしい」などといった悲しいことを言うのはやめていただきたいのである。また、そういうトンチンカンなことを助長するような報道機関の態度も改めて欲しいのである。

 もし、「既成の歯」があってメニューに出せて、「今日はどの歯にいたしましょうか?はいこの白い歯でよろしいですね」といって歯を治せるものなら、それは全くこっちも苦労しないのである。もちろん「判りやすい明細」を出しても一向に構わないだろう。
 会計も明朗になると思う。
 でもそうはいかない・・・

 もし、医療機関が信頼がおけない、あるいは「自分の健康のことだから」内容を知りたい、というのであればもっと別な、もっとましなことを請求して欲しいのである。
2001/02/21 (水)

モノの値段
 そもそも、モノやサービスのの値段とは何だろう?

 例えば家を一軒建てるときに3000万円かかるとする。業者は見積りを出すが、この見積りが実に千差万別なのである。
 大雑把に10項目くらいにかかる予定の費用を計上する業者もあれば、50ページくらいに渡ってそれこそドアノブ一個にいたるまで綿密に積算してくる業者もある。

 後者の方が「誠実そう」に見えることは見えるが、こちらは建築に関してはシロートである。仮にドアノブ一個の業者卸値が3000円でも、その明細書に5000円と書いてあれば、そういうものだと思ってしまう。
 「水道工事一式100万円」と記してあれば、そういうものだと思うし、さらに細かく「配管費用30万円」「手間賃40万円」「検査代行費用30万円」で合計100万円と書いてあれば、ふーんそういうものか、と思うだけである。(あくまでたとえ話である)

 仮に悪徳業者でも誠実そうな「細かい見積書」を作って床下などシロートの目の届かないところで手抜きをすることは可能だし、大雑把な見積書でも料金分きちっと作業するところもあるかも知れない。
 要するに、「キチンと良心的な仕事をするか」ということと「モノやサービスに対する対価の明細」があることは別だと思うのである。

 そうそう、どんなに「細かい見積書」を作る業者でも、家を建てたあと何にどのくらいかかりましたという事後の明細書はない。
2001/02/20 (火)

医療費の明細
 医療(もちろん歯科医療も含めて)は「サービス業」の一種であることに異論はない。
 だがしかし、最近勘違いされているのではないか、と思われるケースをよく見受ける。

 ひとつにコストの問題が挙げられる。
 幸い、僕が診ている実際の患者さんでは「一人たりと」そういうことを言われたことはないのだが、まれに「医療費の明細書がないのはおかしい。スーパーですら買ったものの一個一個の記載のあるレシートを貰うのに」という意見を新聞やメールなどで目にすることがある。
 残念ながらこれは大変的外れなご意見である。

 そもそも「スーパーの買い物」と「医療」を一緒にされること自体医療に真面目に取り組んでいる者にとっては憤慨ものである。スーパーの買い物を蔑視するわけではない。「同じではない」と言いたいのだ。

 スーパーでは「自分の買いたい物」をカゴに放り込んでいってレジで精算する。明細があって当たり前である。そこには自分の意志が100%反映されている。
 残念ではあるが医療ではそうはいかない。虫歯のない患者さんに「削って詰めてくれ」と言われてもそれはできないし、風邪と診断のつかない患者さんに「風邪薬を求められても」処方はできない。

 電話で「オタクでは歯を削って被せるとおいくらかかりますか?」というご質問を受けることもある。残念ながらこれも的外れなご質問である。診てみなければ答えようがないからである。削って「被せる」必要がないかも知れない、詰める治療で治るかも知れないし、仮に「削って被せる」としてもその歯の神経が生きているか・神経の治療がなされているかでも料金は随分異なる。

 お品書きのないすし屋のようだ、と言われても仕方がない。診て、検査して、診断しなければ「何をどう治療するか」が決まらないからである。

 もちろん医療従事者にも不徳のヤカラがいる。残念ながら、「悪徳」と思われても仕方がない歯医者もいることであろう。マスコミはこぞって「不真面目な存在」、「医療過誤の報道」はさかんにする。
 医療に対して一般の方々が不信の目を持つことは止むを得ないことかも知れない。
2001/02/19 (月)

虫歯予防
 17日の記載で「元来歯磨きは不要である」という記載は誤解されると困るので書き足すが、「加工食品」「調理された食品」ばかり食べる文明社会の現代人においてはもちろん歯磨きは必要であろう。衣服を必要としているように。

 さて、どうしたら虫歯にならないのか?ということは「予防歯科」の分野では散々研究されてきていると思う。フッ素の塗布や歯の溝を樹脂で埋めるというのもひとつの方法であろう。もちろん歯磨きも「大事でない」、とは現段階では言い切れない。

 もちろん食事内容にもよるだろうし、生活習慣も大事である。
 ただし、「決定的」な予防法は提唱されていない。つまりこうすれば間違いなく虫歯はできません、という予防法である。
 そして決定的な予防法がないにも関わらず、虫歯は減ってきている。僕は予防が徹底しているから虫歯が減ってきたとは全く思っていない。

 先にも書いたが、歯と歯の間も含めて「完全に歯の面全て」清掃することは土台不可能だ。でも虫歯は減っている。
 何故だろう?もちろん歯科医療が普及してきたとか、予防に対する意識が高まったなどといった、「根拠のない馬鹿げた」ことを述べるつもりはさらさらない。
 キシリトールガムのお陰げでもない。フッ素のお陰でもない。

 僕は「母子の健康状態」の優良化が虫歯予防に繋がっていると思っている。そして虫歯が氾濫していた時代よりも「歯の質」が向上してきているのではないかと思っている。もちろん勝手に思っているだけだが・・・
2001/02/18 (日)

乳幼児医療
 昨今、新聞で「インフルエンザ脳症」やその他急性の熱性疾患で、乳幼児が救急処置を施される間もなく亡くなってしまうことに関する特集を目にすることが多い。

 幼い子どもを抱える親としては人事ではないし、我が国の「医療」はどうなっているのか、と疑問の念も多々湧いてくる。

 小児科医が減少しているらしいし、さらに小児救急医療の体制はかなりお粗末なものらしい。
 確かに子供を診ることはオトナの数倍難しいし、採算を考えると引き合わず、なり手が不足している事実は否めない。「医者」も生活があるので、「生活していけない小児科医になろう」という気にはならないであろう。

 歯科でもそうである。6歳未満の診療報酬は6歳以上の約1.5倍に設定されてはいる。しかし、手間はそれ以上かかるし、そもそもオトナのような慢性疾患はないので確かに「割には合わない」。

 だからといって小児科医へのなり手不足を責めるわけにもいかない。

 小児にかかる診療報酬を段階的に、例えば3歳未満はオトナの3倍、3歳以上6歳未満は2倍、などというくらいの手当てがないと、とても引き合わないであろう。
 もちろんただ引き上げただけでは患者さんの支払う「一部負担金」が莫大すぎて、受診抑制に繋がってしまう。

 「老人医療」に匹敵するくらいの補助が必要だろう。保険者へ負担添加はできないと思う。「老人医療」でアップアップだから。「公的補助」で税金で賄えばよいのだ。

 第一、「明日の日本を維持する、あるいは発展させるべく子供にお金をかけなくてこの国の未来はあるのか?」とヨボヨボの為政者たちに言いたい!
 マスコミの報道や論評も手ぬるい。何が問題で、どうすれば解決の糸口が見つかるのか論評しているのを、見たことがない。
2001/02/17 (土)

虫歯と進化
 (17日分は忙しくて当日中に更新できませんでした。毎日ご閲覧の方々にはお詫び申し上げます)

 元来歯磨きは不要である。動物を見れば判る。「虫歯で悩んでいる」動物はいないからだ。もちろん人間が飼って「加工食品」を与えられているペットは別だが・・・

 元々生き物にとって「虫歯」や「歯槽膿漏」は命に関わる病気だったはずだ。だから「虫歯になりやすい歯の質をもった遺伝子」が途絶えてしまった、とも考えられる。
 加工食品(煮たり、焼いたりという調理も含めて)が「虫歯になりやすい体質」を生んだだろうし、また逆に「歯が弱くても生きていける」土壌を生んだとも考えられる。

 ちょうど「衣服」をまとうことによって「体毛」を不要としたように・・・
2001/02/16 (金)

虫歯の左右差
 同一の個体(同じヒト)の左右で色々と違いがあるかどうかに興味を覚えた時期があった。
 モノを口に入れて噛む時に、「噛みやすい側」というのがある。「主咀嚼側」と呼ばれるものだが、日本人では2:1の割合で「右」の方が噛みやすいらしい。

 手の右利きが関係しているのか、あるいは脳の働きが左右で違うとか、いろいろ理屈では考えられるが、なぜ右の方が噛みやすいのかは判らない。
 虫歯のできやすさには左右差があるのか?右効きの場合、左の方が歯磨きしやすいが、右の方に虫歯はできやすいのか?

 モノをよく噛むことによってある程度虫歯を防ぐことができる、と言われているがそういう影響はあるのか?

 モノをよく噛むことによってある程度虫歯を防ぐことができる、というのは本当である。唾液がたくさん出るからである。唾液の成分自体に虫歯を防ぐ酵素が含まれているし、唾液中のカルシウムが初期の虫歯を修復することは以前書いた。
 さらに唾液そのものが口の中の酸性を緩和してくれる。

 虫歯にはまだまだ奇妙な点がたくさんある。
 原因も判らない。(少なくとも僕には判らない。というより、今ある説には納得していない)
 語弊を承知で書かせていただけるなら、ほとんどの歯医者さんは大学で教わって「判ったような気になっているだけ」ではないかと思う。

 そして、なぜこんな根源的なことを真面目に研究しないのかも判らない。
 恐らく今まで書いてきたようなことに「疑問をもつヒト」があまりいないのではないかと思っている。
2001/02/15 (木)

虫歯の原因
 昨日書いた「偶然」ということはどういうことか?
 「必然」ではない、ということである。

 僕らは大学で虫歯ができる3つの要素という概念を教わった。虫歯は一種の感染症である。感染症全てに言えることなのだが、その成立には「細菌(もしくはウイルス)」、「宿主」、そして「環境」の3つが揃うことが必要を言われている。

 虫歯の場合は、細菌は虫歯を引き起こす細菌だし、宿主は歯そのもの、そして環境は糖分が豊富であることや唾液が少ないことなど、となる。
 このうちどれかひとつ欠けても虫歯にはなりえないのだが、全て揃って一定の条件下では「必ずといっていいほど虫歯になる」と思い込まされてきた。恐らく試験管の中の実験ではそうなのであろう。

 ここ数年「カリエスリスク」(虫歯になりやすさ)には個人差があり、その診断に基づいた個々の治療法や予防法などが、提唱・実践されるようになってきた。
 しかし、その概念すら僕はあやしいと思っている。

 なぜなら、同一の個体で「虫歯がある歯とない歯がある」ことや一番虫歯になる可能性が高い「歯と歯の間」ですら、虫歯があるところとないところがある、ということが挙げられる。
 極端な場合、隣り合った歯の片方の「歯と歯の間」にひどい虫歯があり、それに接するもう片方の歯には虫歯をほとんど認めない、という現象をみかけることすらある。

 こういった現象が起こる合理的な「説」というものを目にしたことがない。
2001/02/14 (水)

虫歯と歯磨き
 「間違いだらけ・・・」の中で書こう書こうと思いつつ、ついぞ書かなかったことがあるので、これを機に書いておく。
 虫歯と歯磨きの関連についてである。

 2-3: 歯医者の腕前(3)のところで書いたのであるが、治療以前に必要以上にブラッシング指導に時間をかけるのはいかがなものか?という主旨の記載をしている。

 実は最近非常に疑問に感じていることがある。でもこれを書くと「ハブラシ」と「歯磨き粉」を製造しているメーカーから命を狙われたらどうしよう?という思いがあってなかなか踏ん切りがつかなかったのであるが、最近は読者も増え(味方だと思っております)、自信もついてきたので思い切って書くこととする。

 「虫歯を作らないために歯磨きは本当に必要か?」という疑問である。

 これはエッと思われるかも知れない。虫歯予防に歯磨きはかかせない、と小学校以来教わってきたし、大抵の歯医者も歯磨きを勧める。もちろん僕も歯磨き(というよりブラッシング)指導はする。コマーシャルではあかたも「プラーク(歯垢)を放っておくと必ず虫歯になる」かのような中身で放映している。

 次の二点で疑問を挟む余地がある。
 ひとつは患者さんで「生まれてこのかた一度もハブラシを当てたことがありません」というくらいドロドロの歯のまま来院される方がいるのだ。
 でも不思議なことに意外と虫歯が少なかったりする。

 もう一点は、僕らでもそうなのだが、毎日歯磨きを3度3度していても「必ずハブラシが行き届いていないはず」の箇所があるのだ。
 でもそこが虫食ってひどくなっている、というわけではない。

 実は虫歯は「偶然」できるのではないかと、最近思い始めている。
2001/02/13 (火)

ハイブリッド素材
 保険の冠とセラミックの冠は歯の周りの組織にとってよくない、と書いたが当然「では何がよいのか」について書かねばならない。

 金属なら高カラットの金合金、そして白い冠なら「ハイブリッド素材」の冠である。前者は古くから使われてきて「口の中に入れるならベスト」と言われる素材である。
 硬さも密着性も、耐蝕性も抜群であるのだが、唯一の欠点は「見かけが天然歯とかけ離れている」という点であろう。

 後者のハイブリッド素材というのはここ最近目覚しく発展している素材で、一種の「プラスチックとセラミックの中間」の組成と性質をもつ材料と言える。
 製品にもよるが、ものによっては「エナメルと同等の磨耗しやすさ」を謳っている。
 見た目はもちろん白く、どの歯に入れても違和感は少ないはずだ。

 ただ透明感などわずかに純粋のセラミック製の歯に一歩譲る部分もあるが・・・

 残念ながら保険適応の効く材料ではない。でも見かけと歯の周りの組織に対する優しさは「保険でできる金属」を使った治療がいやになるくらい優れている
2001/02/12 (月)

歯周組織の大敵:保険の冠
 歯周疾患と虫歯とどちらがより恐ろしい病気か、そして歯周疾患がどのような疾患かはおおよそ「間違いだらけの歯医者さん選び」の治療法と治療費の目安(歯槽膿漏編-1)に概略を記している。

 最近とみに「噛み合せの異常」から局所的に歯周疾患にかかるケースにお目にかかることがある。
 もちろん全てご自分の歯である場合はどうしようもなかっただろう、と思われる方もいるが、残念なのは「歯科治療をしてあるばっかりに」歯周疾患になってしまったと思われるケースも多数お目にかかることである。

 これはどういうことかと言うと、被せる治療をしたばっかりにその歯の根の回りの組織が壊れてしまう、ということだ。
 いくつかのパターンがある。被せてある冠の縁があってなくて汚れが溜まり、歯周炎を起こしていくケースや「保険で硬い金属を使って治した」ばっかりにその強度に耐え切れなくなって歯の根の回りの組織が壊れるケースが一番困る。

 これは実は悲劇的である。
 僕も反省しなければならない部分が多々あるのだが、「保険でできる範囲の治療」は思った以上に劣悪になりうる、ということを最近感じているのである。

 一時的にはもちろんかなり「遜色ない治療」が可能である。手抜さえしなければ「見かけ」以外に保険でできる治療と保険が効かない治療との間に大差はない。
 しかし、早ければ1年、遅くとも数年以内に「保険の治療」はダメになる可能性があるのである。
 しかもダメになる部分は、症状の出にくい「歯周組織」なのである。

 だからと言って、僕は決して「保険の効かない」メタルボンドという白いセラミックの歯もお勧めはしない。これは金属以上に「磨り減りにくい」硬い素材であるので、下手をすると金属以上に歯周組織(歯の根の回りの組織)をダメにしてしまう恐れがあるからである。
2001/02/11 (日)

大統一理論
 物理学の世界では「大統一理論」という言葉があるらしい。細かいことは判らないが、重力や電気的な力、磁力、クーロン力などを一つの数式あるいは単位で表すことができないか、と研究されているらしい。(今も研究されているのか、どこまで進展しているのかは判らない)

 実は密かに歯科の疾患でも「大統一理論」を打ち立てられないものか、とここ数年考えている。(ちょっと大げさかも知れないし、他の歯医者さんが聞いたら笑われるかも知れないが)
 もちろん、虫歯は別だが・・・

 知覚過敏、WSD、歯冠(歯の頭の部分)の咬耗、顎関節症、そして歯周疾患は根源的な原因は「ひとつ」ではないかと思っているからである。これらの疾患のうち、歯周疾患は今月まだ述べていない。

 実はこれが今最も問題にしたい疾患なのであるが、明日以降書き綴ることとする。
2001/02/10 (土)
「補足」
 ご閲覧の皆様にお詫びと訂正です。今月5日の記載に重大な誤りがありましたので、訂正しておきました。「濃い色がついて汚らしく見える虫歯」は「慢性の虫歯」です。
2001/02/10 (土)

顎関節症
 実は「WSD」の原因についていろいろと議論があったのと同じようなことが、「顎関節症」でもあった。

 古くは「顎関節症の原因」は咬合(噛み合せ)の不良と言われてきたのだ。もちろんそう言うケースがなきにしもあらずなのだが、逆に歯並びがガタガタだったりあっちこっち歯がなくなっている人でも顎関節に何ら異常がない、という方が大半だったのである。

 むしろ正常な噛み合せで綺麗に歯が並んでいる人に見受けるケースが多いとさえ言える。

 現在、顎関節症の原因は「ストレスや全身の筋肉とのバランスの不調和」とされる説が優位であるし、そう考えた方が納得いきやすい。
 僕が大学で教わっていた頃なぞは「補綴科」という入れ歯や被せる治療をメインに行う科で「顎関節症」の治療や研究をしていたものだったが、成果が得られていたかどうかは定かではない。

 もちろん「噛み合せの不良」が患者さんのストレスや筋肉のバランスの不調和に繋がっていれば「噛み合せの不良」=「顎関節症の原因」と見れないことはないが・・・
 また、まれに「咬合(噛み合せ)」が原因で「全身の筋肉のバランス」の不調和を来たしてしまうケースも中にはあるらしい。因果関係は考えれば考えるほど複雑だ。
2001/02/09 (金)

歯茎でしみる
 さて、意外としみるという現象で軽視されがちなのが、歯茎の炎症である。
 虫歯もない、知覚過敏でもない、でも冷たいものや熱いものがしみる、といった場合、大なり小なり歯茎の側に原因がある場合がある。

 虫歯や知覚過敏でないと断言できるのは「神経を取る治療」をしてある歯にも、そういう症状がある場合があるからだ。

 まれに誤診がありうる。結構しみる虫歯があって、虫歯でしみているのだろうと「神経を取る治療」をして完全に神経を取ったはずなのに相変わらず「しみる」という経験をされた方はいないだろうか?
 もちろん神経に達するような深い虫歯の場合、神経を取る治療そのものに問題はないのだが、上記の場合は「歯茎でしみている」ように感じているケースである。

 実は僕も大学に籍をおいていたとき苦い経験がある。神経の治療をして何度繰り返しても症状が改善しない。たまたま僕が出張でいない時に別の先生に診てもらったら「歯茎」の方に若干の炎症があって、その処置をすると症状が改善した、という経験が。

 炎症の程度にもよるが、歯の痛みと歯茎の痛みは時に極めて近似することがある。これをお読みのあなたが通われている歯医者さんで、「歯茎のチェックや治療」もしてくれているだろうか?
2001/02/08 (木)
「補足」
 本日、神戸のTさんより「7000」ゲットのメールをいただきました。近日中に粗品を郵送いたします。是非ハンドルネームをお知らせ下さい。
2001/02/08 (木)

知覚過敏の治療法
 知覚過敏は従来大変やっかいな疾患であった。
 目に見えて異常があるわけでないのに「非常にシミル」し、歯医者の側からすると原因がはっきりしていないので、例えば削って詰めるというわけにもいかず、だからこそ「知覚過敏」などというあいまいな病名が付けられたのだと思う。

 知覚過敏の治療法は従来、知覚過敏に塗る薬を塗るとか、レーザーを当てるとか極端な場合神経を取ってしまう、といった手法がとられてきた。
 ところが「知覚過敏に有効と言われる塗り薬」を塗ってもまた再発するケースが多かったのである。(もちろん神経を取ってしまえばハナシは別だが)

 これは当然である。再度亀裂が入ればまたシミルのであるから・・・

 原因が判れば治療法もおのずと変わってくる。亀裂と判ればそれに応じた治療をすればよいし、僕はそういう過程のもとで「従来言われてこなかった治療法」を試して劇的に効果を挙げている。
 ちゃんと研究して世に発表した方法ではないので、恥ずかしくてここには書けないが・・・

 「知覚過敏に有効と言われる塗り薬」よりかははるかに効果的な治療法である。
2001/02/07 (水)

ニアミス
 今日は「歯のこと」はお休みします。
 連日「ニアミス」の報道がされているので、ひとつ見解・・・

 ほうぼうの掲示板でも話題になっているし、僕も「飛行機に名前をつけたら紛らわしくなくなるのではないか」とも思ったが、これも無理がある。名前は恐らく機体固有のものになるだろうから、羽田から千歳に向かう便も、折り返し千歳から羽田に戻る便も同じ名前になってしまう。
 結局上りか下りを示す記号やその日の「何回目」の便数かを数字で付記しなければならないので意味がないことに気付く。

 また三次元レーダー(技術的には可能なはず)の導入も判り易いのではないかと思ったが、逆に「見づらいのではないか」というご意見もあった。

 根本的な解決には日本の空を占拠している「軍事空域」を開放するしかないとも思うが、「雫石」のような悲劇が繰り返されても困る。

 ただ、今回の報道を見聞きしていて気になったことが一つある。二機の機長と管制は「事後報告」の前までは英語で交信していたということだ。
 航空機と管制官の通信は原則英語でなければだめだが、よほど緊急の場合は母国語で喋っていい、という規定があるらしい。

 恐らく958とか907なども英語の発音で言っていたのだろう。そのこと自体も誤解を招きやすいと思うのだが、それ以上に思うのは二機の機長と管制官がニアミス直後まで「緊急事態」となぜ判断しなかったのだろうか?
2001/02/06 (火)

WSD
 知覚過敏は「歯に亀裂が入ってしみる」のではないか?というのは突然ひらめいたことではない。WSDの成因からの発想である。

 WSDとはWedged Shaped Deffectの略で「楔状欠損」と呼ばれる病態である。
 主に「歯の根元」(歯茎との境界のすぐ近く)にできる文字通り「くさび状」の欠損である。

 実は十数年前、僕が大学で教わったとき、この原因は「ハブラシによる乱暴な横磨き」と習ったし、教科書にもはっきりそう記述してあった。
 僕らは大学で教わることに間違いはないし、教科書に間違いが書いてあるとは夢想だにしなかった。もちろん今話題の「歯科医師国家試験」でも「WSDの原因はハブラシによる横磨き」が正解とされた。

 ところが、近年この説に赤信号が点灯しているのである。
 この現象はハブラシによるものではなく、噛み合わせから根元で「欠ける」ものである、という説が出てきたのだ。

 実はその説を目にしたとき、僕は我が目を疑った。「大学で教わったことは絶対」と思っていたからだ。しかし、そういう目で見てみると、実は新説の方がはるかに納得がいく内容だったのである。

 まず横磨きするとそのくさび状の「欠け」は数本の歯の一直線上になければならないはずなのだが、並んでいないのである。特に糸切り歯からその奥数本に見られる現象だが、それぞれの歯茎との境にできており、通常一直線上にはないのである。

 さらに、その根元の欠けを「歯の治療」で修復しても、「取れやすい」という事実があった。これもハブラシ原因説では説明がつかない。噛み合わせ原因説では取れやすくて当たり前なのである。

 その成因は下に書いてきたのとまさに同じなのである。

 実は、歯医者の中にもあいかわらず原因はハブラシと思っている人も多い。でもその先生を責めるわけにもいかない。
 ごく最近、大学の講座にいる若い先生に「WSDの原因はなんだろう?」と問い掛けたら「ハブラシによる横磨きですよね」と返答が帰ってきたくらい、旧説が浸透しているのだから・・・
2001/02/05 (月)

急性の虫歯
慢性の虫歯
 虫歯にも急性の虫歯と慢性の虫歯がある。
 このことは意外と知られていない。急性の虫歯は勿論「歯に穴が開いていて、色があまり濃くなく、しみる」虫歯である。

 対して慢性の虫歯は「歯に穴が開いているが、濃い色(時には真っ黒)が付いていて、あまりしみない」虫歯である。

 急性の虫歯は今現在進行しつつある虫歯で、慢性の虫歯はほとんど進行の止まった虫歯、と言い換えることもできる。
 実は見かけは「慢性の虫歯」の方が汚らしく悪そうに見えるのだが、歯と歯の間やブラシの届きずらい部分以外は少しくらい放っておいても問題はない。

 急性の場合はそういかない。ただちに手を付けないと半年もすると驚くほど進行してしまう。そして、急性か慢性のどちらの経緯をたどるかは、その人の年齢や歯の質、唾液の性状などが関わってくるのであるが、そのことはまた日を改めて書くつもりでいる。

 さて、「歯」という臓器は虫歯などによる「しみる」という信号に対し、「みずから解決しよう」という機構を備えている。
 ひとつは唾液中のカルシウムによる「修復機能」である。
 もうひとつは虫に食われる(あえてそういう原始的な書き方をする)ことによって神経の入っている空洞が狭まるという機能である。

 後者は専門用語では「二次象牙質の添加」で「髄室が狭窄する」と言う。
 この機能によって虫に食われた歯は、虫の部分から神経までの距離を保ち、自らしみないように工夫しているのである。
 ただし、この機能は緩やかに進行してくれる時しか有効に働かない。
 あんまり急だと二次象牙質の添加が追いつかないからである。

 「進行の速度<二次象牙質の添加速度」の場合のみ有効なのである。
 だからこそ、知覚過敏は「ハブラシや歯の根の露出が原因ではない」、と言えるのである。
2001/02/04 (日)
「補足」
 昨日までの記載で「慣性」と「慣性モーメント」を混同して使用しておりましたので、訂正し、お詫び申し上げます。物理の方面に明るい方よりご指摘を受けました。ありがとうございました。
2001/02/04 (日)

阪神淡路大震災
 さて、昨日誤用を承知で「慣性」と書いたのには訳がある。
 もう一点の例えのためである。

 阪神淡路大震災で、何箇所も高速道路が倒壊した。あれはまさに慣性で上部構造が「その場に留まろう」とするのに対して、地面が特定の周波数で振動したため起こった。
 そして破壊の作用が集中したのは橋脚の根元である。

 実はチョークで黒板に直線を引くとき、力を入れすぎると折れるのだが、やはり指に近い根元の部分で折れる。一番応力がかかるのであろう。

 歯に関しても全く同じである。応力が集中するのは歯の根元、すなわち歯と歯の根の境目である。
 もちろん「歯が折れる」ということは滅多にないが、摩擦と特定の周波数の振動とがぶつかり合って根元に亀裂が入るのだ。
 亀裂の深さはマチマチである。本当に表面に留まるケースもあれば、象牙質に達するケースもある。もちろん極端に深ければ神経に達する場合もあるだろう。
 当然、ちょっとした虫歯よりも強烈にしみることがある。

 これまでのハナシは、何か教科書とか文献を見ての根拠のあるハナシではない。あくまで僕の推察である。もちろん、ちゃんと調べればそういう研究をしている人がいて、きちんとした形で発表しているかも知れない。
 しかし、WEB検索で出てくる「知覚過敏の原因」は大抵が「歯の根が露出してしみる」とか、「ハブラシの不良」とか「歯磨き粉の使い方が間違っている」などと言ったおよそトンチンカンなことしか書かれていない。

 僕はここ10年以上、わざと歯を横磨きで乱暴に磨いているが、それが原因で知覚過敏になったタメシがないし、歯の根が5ミリも露出していて、全くしみない人が大勢いるのを知っている。
 もちろん、歯磨き粉をたっぷり付けてこれでもかとごしごし横磨きすれば、少しは歯が磨り減るかも知れないし、歯の根でしみるということもまれにはあるかも知れない。

 でもそういう現象は「徐々に進行する」性質のものである。
 徐々に進行する現象がいかに「しみない」ものであるのかは明日書こう。
2001/02/03 (土)

チョークと黒板
 昨日の続き・・・
 チョークで黒板に直線を引くとき、角度や持ち方によってチョークが「キーーーー」っと鳥肌が立つようなイヤな音を発するのを経験された方も多いと思う。

 歯軋りの音はあれと原理が全く同じである。
 歯軋りをして「音」が鳴るのは、歯を上下ですり合わせることによって歯が特定の周波数で振動するために他ならない。
 また、骨と歯の根の間に介在する「歯根膜」という組織が、チョークを持つ手の皮膚に該当する。チョークの持ち方によっても音が出たり出なかったりするのと同じで、歯を支える骨が非常にしっかりしていても、ゆるんで歯槽膿漏気味でも豪快な歯軋りの音は出ないのではないかと思っている。

 物理学が得意なわけではなかったので、この用語を持ち出すのは気がひけるのだが、いわゆる「慣性」(ものがもとあった位置に留まろうとする性質)と摩擦も歯軋りの音に拍車をかけているのではないかと思っている。(もしかしたら、この用語の使い方は誤っているかも知れない)

 僕は、この特定の周波数の振動と、摩擦による歯の頭の部分はもとの位置に留まろうとする力とがぶつかり合って、歯の根元に目に見えない亀裂が入るのではないかと信じている。
2001/02/02 (金)

知覚過敏・1
 さて、もちろんわざわざここに日誌を読みに来て下さる方のために、ここにありふれたことを書いても何も面白いことはないと思う。
 だから、普段はなかなか歯医者さんで説明してくれないようなこと、本屋に売っているような本には書いていないことを書きたいと思う。

 まずは、歯の痛みに関することを書こう・・・この点に関しては大変誤解している方が多いし、何度患者さんに説明しても判っていただけないこともある。

 虫歯でもなさそうなのに、歯がしみる経験をした方は多いと思う。「知覚過敏」か「歯肉炎」である。もしくは両方の合併というケースもある。まず知覚過敏について書こう。

 僕も経験があるが、非常にしみる。風を口からシーっと吸っただけでも痛い。もちろん冷水なんかは飛び上がるほどしみる。なぜこのようなことが起こるのだろうか?
 諸説あるが、ひとつの大きな原因の一つに「歯にヒビが入っている」というケースがある。もちろん肉眼で見えるようなヒビではない。

 エナメルと呼ばれる歯の表面、あるいは歯茎が下がって剥き出しになった歯の根にヒビが入っていれば「しみないわけ」がない。実はこんなあたりまえのことを、十数年前少なくとも僕は大学で教わらなかったのだ!

 もしかしたら、誰か研究しているのかも知れないが、恐らく研究は容易でないであろう。「生えている」知覚過敏の歯を「抜いて」調べるわけにはいかないからだ。また人工的にこの現象を実験室の中で再現することも困難だろうと思う。長年擦り合わされた同一固体の上下の歯が歯根膜というクッションを介して骨に植わわさり、特定の噛み方(歯軋り)をして初めて、この現象が起こると考えられるからだ。

 これは慣性と摩擦による振動のもたらす現象だと僕は理解している。
2001/02/01 (木)

医者嫌い
 実は僕もそうなのだが、よほど痛くなったり何らかの不都合がないと医者にはかかりたくない性格である。医者に行って、ここも悪いあそこも悪い、と言われるのではないだろうか?と思うだけで足が遠のく。
 まして、いくらかかるか判らない。

 先日我が家の子供がスキーで足を捻挫し、整形外科を受診したら、レントゲン写真を撮り、テーピングを施され、シップ薬を処方されただけで10,090円という金額を請求されたそうだ。
(うちでは初診でそんな高い金額いただいたことありません!)

 歯医者を訪れる患者さんもそういう心境なのだろう。恐らく。
 あそこも悪い、ここも悪い、この歯は抜かなければダメだ、ここは神経取らなければダメだ、歯を入れ替えなければダメだ・・・保険が効かないから20万円かかる・・・などと言われたらどうしよう?会社は忙しいし休めない、何かと出費もかさむ。景気も悪いし、何より怖い・・・
 そんな恐怖が受診前から頭を駆け巡ることと思う・・・

 病気にしても虫歯(これも一種の病気なのであるが)にしても何でも早期発見・早期治療に越したことはない・・・
 今月号をお読みになって、少しでも「賢い患者さん」になっていただきたい・・・

2000年: 7月号 8月号 9月号 10月号 11月号 (以上、雑記)
2000年:12月号 「カレンダーと時間のナゾ」
 
2001年: 1月号 「バカは風邪ひかない、と進化論」