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「間違いだらけの歯医者さん選び」

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3-4: 歯医者の質
 今、大学にドクターが余っております。
 世間一般の就職率が低く、また勤めていてもフリーター状態の人が多いという現象によく似ています。
 開業医の数が増え、一部の大きな歯科医院を除いては、他のドクターを雇う余裕もなく、あるいは雇う必要もありません。院長一人と何人かのスタッフとでやっていけます。
 また、大学に何年か残って、そろそろ開業しても良いくらいの腕前のベテランドクターでも、開業地が見つからなかったり、開業資金不足で開業できず、大学に残り続けています。とりあえず大学に残っていれば、食うには困りません。
 新たに国家試験に合格した「新歯科医師」は、開業医に勤め口を探してもなかなか見つからないため、とりあえず大学に残るしかありません。

 さて、大学病院もまた患者さんの数が減ってきていることには変りありません。大学にはベテランドクターもたくさん残っているし、はたまた患者さんの意識も向上しているので、新米ドクターはなかなか患者さんを「自分で」診る機会が巡ってきません。
 確かに上の先生方の治療はたくさん見れますが、自分で治療して技術を磨いていく世界です。治療技術はなかなか向上しないでしょう。
 
 10年前、僕がある講座(I 医科大学小児歯科の講座)に残った時、講座には約10人のドクターしかいませんでした。(僕を含めて)
 一日患者さんは50人から100人位来ていました。10人のドクターのうち、外来に出ている数は5人位です。残りは授業や実習の補助をしたり、研究をしたりしています。
 つまり一日5人で50人から100人の患者さんを診るのです。単純に計算しても、一人のドクターが10人から20人の患者さんを診なければやっていけません。

 最近別の大学の講座(某大学の小児歯科の講座)の若い先生と話をする機会がありましたが、話を聞いて驚かされました。
講座に在籍するドクターの数が約50人。出張や研究、講義などで外来に出られないドクターが約半数。残りの25人で、一日30人から50人の患者さんを診る、というのです。
 単純計算で一人のドクターは、「一日に診る患者さんは1人か2人」となります。
 実際、ほとんどの治療はベテランドクターがあたるでしょうから、新米ドクターは毎日ほとんど見ているだけか、治療してもほとんど初歩的な治療のみ、という現実でしょう。

 これではいくら大学に籍を置いていても、いつまで経っても一人前のドクターになりようがありません。もちろん、例外はあります。今でも「野戦病院」のごとく数多くの患者さんをこなしている大学病院も、中にはあります。

 車の免許の「ペーパードライバー」ではありませんが、今「ペーパードクター」が増えつつあると言っても過言ではありません。
 ただし、「新人ドクター」も「大学」も責めるわけにはまいりません。新たなドクターを作り続けることを容認し、また国民の健康維持のことを考えない某「国民の健康を司る」省の無策こそ責められるべきでしょう。

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