「序章」

35億年前、できたばかりの原始地球に惑星が衝突しました。
もうちょっとその天体が小さければ、はじき飛ばされた破片で
「月」という衛星になっていたはずですが、あいにく
地球よりやや小型の惑星・・・そうですね、火星くらいの大きさでした。

そして、破片はお互いの重力で集積し、再び固まり、
二つの惑星が連星というカタチで再形成されてしまいました。

二つの惑星はどちらが中心ということなくお互いに円軌道で周りを回り、
そして太陽の周りを一年かけて一周しています。

お互い、重力の影響が大きいため、地殻変動、火山活動、
そして潮の満ち引きがかなり大きく、そのせいもあって
第一地球の生命の進化はまたたく間に起こりました。

ただ、はじきとばされた破片の方でできた第二地球は
「死の惑星」でした。

双方海も火山も形成されてはいましたが、第二地球では
原始的な生命が誕生した後、ほとんど進化しませんでした。

なぜなら、20日という周期で第一地球の周りを回っていたため
太陽の光が一日という周期でまんべんなく降り注ぐことが
なかったからです。

10日間は日が当たって、気温は160度にも達し、残りの
10日間は太陽が全く当たらず、気温は氷点下90度でした。

大気があるおかげで、月ほどは極端ではないにせよ、
とうてい知的生命体が存在しえる環境ではなかったのです・・・


「第一章」

「地殻変動警報です」
警報が作戦室内に響き渡っていた。

「今週は地殻変動警報が多いなぁ・・・」
僕はフト手を止めて窓下に広がる雲を見て地上の様子を思い浮かべた。

「また地球が怒っているのよ」
エミがつぶやいた・・・

地球が誕生してから約35億年・・・
絶えず、この星は動いていた。
地殻の変動、火山活動、そして地軸のブレ、
もし、そういった天変地異がなかったらどんなに平穏だろう?

僕はそう思いを巡らせたが、もし平穏であったなら50億年かかっていた進歩の歩みを、この世界では35億年で達成してしまったことは知る由もなかった。

先ほどまでなっていた警報の音が変わった。
当然のことだが、地殻変動警報に続き、大気変動警報がなる。

浮遊都市の姿勢制御装置があちこちで作動準備を始める音が聞こえてくる。
でも、その音は僕の手にもつエアタービンの音でかきけされた。

治療を終えて、僕は言う。
「今日は前歯の虫歯を治しました。次は奥歯の型とりをしますね」

そう・・・僕はこの世界でも歯医者をやっていた・・・



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